学生と企業・クリエイターの共同制作を440万円で企画運営する事業者を8月7日まで募集——巡回展示は圏域3か所以上が条件
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福山市が「びんごクリエイターズラボ企画運営業務」の公募型プロポーザルを実施しています。参加申込の受付期間は2026年7月24日(金曜日)から8月7日(金曜日)午後5時まで。委託費の上限は440万円(税込)で、履行期間は契約締結の日から2027年(令和9年)3月31日までです。
担当は企画財政局企画政策部備後圏域連携推進室。備後圏域とは、広島県側の福山市、三原市、尾道市、府中市、竹原市、世羅町、神石高原町と、岡山県側の笠岡市、井原市を合わせた9市町です。
僕がこの公募で目を留めたのは、事業の狙いの書き方でした。仕様書の「業務の目的」はこう始まります。「備後圏域では、転出超過が継続しており、特に10歳代後半から20歳代前半の若者が進学又は就職時期において、圏域外に転出する傾向がある」。
若者の流出を、作品づくりで止めようという事業です。
何をどれだけやらせるのか
| 要素 | 条件 |
|---|---|
| コラボレーション活動 | 実施組数は提案による。予算の範囲内で過半数以上の圏域市町の参加者を入れること |
| 成果発表会(イベント) | 1回以上 |
| 成果物等の巡回展示 | 圏域市町において3か所以上 |
| イベント・巡回展示の入場料 | 無料 |
| 企画提案書 | A4サイズ10枚以内、文字10ポイント以上 |
実施組数を市が決めていないのが特徴です。「実施組数は提案によるものとする」。予算440万円の中で何組動かすかは、応募する事業者の設計に委ねられています。
一方で、参加者の分布には縛りがあります。「予算の範囲内で過半数以上の圏域市町の学生、企業又はクリエイターを参加させること」。9市町のうち5市町以上から参加者を集めなければなりません。福山市の事業ですが、福山だけで完結させることは許されていません。
そして巡回展示が3か所以上。作った物を一度発表して終わりにせず、圏域内を回すよう指定されています。
いや、僕がここで手を止めたのは、移動手段の条項でした。「各教育機関(高校・大学等)等からコラボレーション活動の会場までの学生の移動手段(貸切バスやタクシー等)を確保すること」。しかも貸切バスを使う場合は「事業者から交付された運送引受書の写しを、事前に発注者へ提出すること」まで書かれています。
さすがに、これは過去に何かあったか、あるいは他自治体の事故を踏まえた条文だと思いました。高校生を学校から会場まで運ぶという行為が、事業の中で最もリスクの高い部分だと発注側が認識しているわけです。

表層は「若者の創作支援」、本質は「制作品の権利をどう分けるかの実験」
僕がこの仕様書でいちばん読み込んだのは、著作権と所有権の扱いです。
まず「制作品は制作者に帰属するものとする」。作った学生やクリエイターのものになります。市が買い上げるのではありません。
そして営利利用について、こう書かれています。「企画参加者は、コラボレーション活動における制作品そのものを営利目的で利用できないものとする。ただし、デザインの再利用のほか、複製やデザインの一部改変など、新たに構成するものについては、発注者が費用を負担しないことを条件として、営利目的での利用ができるものとする」。
つまり、その場で作った物そのものは売れない。でもそのデザインを使って新しく作った物は売っていい、という切り分けです。
僕はこの条文を、企業側の参加動機に効くと読みました。企業が学生と組んで商品デザインを作った場合、その成果を自社の商品に活かせないなら参加する意味が薄れます。「デザインの再利用」を認めることで、企業側に持ち帰るものが残る形になっています。
そもそも自治体の創作系事業は、成果物が市の所有物になって倉庫に眠るパターンが多い。今回は「イベント及び巡回展示終了後、制作者に帰属する制作品について、速やかに返還すること」と明記されており、返す前提です。
まあ、返還費用も委託費に含まれると書かれているので、受注者は搬入・展示・搬出・返却まで440万円の中で回さなければなりません。組数を増やしすぎると物流で潰れます。
評価は組織より「担当者」を見る配分になっている
評価項目の配点で、僕が意外だと感じた点があります。
「(1)組織評価」は業務実績5点と実施体制5点で計10点。会社としての実績はここまでです。そのうえで「(2)担当者評価」という項目が別に立っており、担当者個人の業務実績が問われます。
過去10年間に完了した同種・類似業務を、会社としてと担当者としての両方で見る。しかも「件数だけでなく、実績の内容・成果が当該業務にふさわしいか等を総合的に評価する」。
意外と、これは440万円規模の事業に合った見方です。この金額で動く事業は、実質的に担当者1〜2人の力量で結果が変わります。大きな会社が受注して新人を付けるより、実績のある個人が回すほうが成果が出る。
企画提案書がA4で10枚以内、文字10ポイント以上という制約も同じ方向です。分厚い提案書を作れる体力ではなく、10枚で構想を書ける力を見ています。


「具体例」に書かれた4つの型
作成要領には、共同制作の具体例が4つ挙げられています。
– 企業・クリエイターと学生による商品開発、デザイン開発 – 企業・クリエイターと学生による什器制作 – 企業・クリエイターと学生による学校紹介冊子、学校紹介動画等の作成 – 企業・クリエイターと学生による圏域内の企業等の取材冊子、レポート等の作成
僕がこの並びで気づいたのは、後半2つの性格です。学校紹介と企業取材。どちらも「地元を紹介する媒体を学生自身が作る」形になっています。
商品開発や什器制作は、作る技術の話です。しかし学校紹介や企業取材は、学生が地元の企業を見に行く行為そのものが目的になります。仕様書の目的に「学生が、企業・クリエイターの魅力を知り、圏域で働く選択肢につなげる」と書かれている通りです。
成果発表会の具体例も具体的です。「成果の発表(プレゼンテーション、展示、パフォーマンス など)」に加えて「ネットワーキング(ワークショップや座談会 など)」。作品を見せる場ではなく、人が話す場を作れという指定です。
追いかけるべき点
僕が追いたいのは3つです。
ひとつめは、受注者が提案する実施組数です。440万円で何組動かすかは、事業の性格を決めます。2〜3組に絞って深くやるのか、10組近く広げるのか。市が数を決めなかった以上、ここが提案の中心になります。
ふたつめは、巡回展示の3か所がどこになるかです。福山市と、あと2か所以上。三原・尾道・府中・竹原・世羅・神石高原・笠岡・井原のどこに回すかで、圏域連携の実質が見えます。
みっつめは、アンケートの設計です。仕様書は「属性、満足度、参加のきっかけ、今後の本事業の在り方等」を挙げています。若者の流出を止める事業なのに、進路意識の変化を測る項目が明示されていません。参加した学生が圏域で働く選択肢を持ったかどうかを聞かないと、目的に対する答えが出ません。
質問書の受付は7月31日(金曜日)午後5時まで、回答は8月3日(月曜日)に公表される予定です。参加申込の締切は8月7日(金曜日)午後5時。
参照した主な情報
– 福山市「びんごクリエイターズラボ企画運営業務委託に係るプロポーザルについて」
