鞆・沼隈で周遊スポット10か所以上と電動アシスト自転車5台のレンタサイクル実証を350万円で公募——利用料収入は受注者のもの
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福山市が「福山市南部周遊観光促進業務」のプロポーザルを実施しています。公告は2026年7月17日(金曜日)、参加申込書・企画提案書の受付は同年7月31日(金曜日)午後5時まで。委託費の上限は350万円(税込)で、履行期間は契約締結の日から2027年(令和9年)2月26日(金曜日)までです。
担当は経済環境局文化観光振興部観光戦略課。二次審査のプレゼンテーションは8月7日(金曜日)予定、結果通知は8月10日(月曜日)です。
僕がこの公募でまず引っかかったのは、350万円という金額と業務量の関係でした。周遊キャンペーンを3か月以上、周遊スポットを10か所以上、そこにレンタサイクルの実証実験まで含まれています。
350万円で求められている3つの仕事
| 業務 | 主な条件 |
|---|---|
| 周遊キャンペーン | スポット10か所以上、鞆町・沼隈町を中心とした沼隈半島から選定。期間は概ね3か月以上 |
| レンタサイクル実証実験 | 道の駅アリスト沼隈を拠点。電動アシスト自転車5台以上を最低30日 |
| 効果検証・分析 | 参加者の行動履歴データを取得し、属性・人気スポット・周遊ルートを分析 |
キャンペーン費用の扱いが明記されています。「キャンペーンに係る費用(システム構築、景品購入費及び発送に掛かる経費等)は受注者が責任を持って、委託料の範囲内で行うこと」。つまり景品もシステムも350万円の内側です。
そして進捗管理の頻度。「最低2週間に1回以上発注者と協議すること。また、協議録を作成し、協議終了後速やかに発注者へ提出すること」。7月末の契約から2月まで約7か月、2週に1回なら14回以上の協議と、その都度の協議録作成が入ります。
いや、僕がここで手を止めたのは、レンタサイクルの料金の扱いです。「レンタサイクルの利用料金は委託料に含まず、利用料金収入は受注者に帰属するものとする」。
さすがに、これは珍しい条文だと思いました。自治体の実証事業で受注者が売上を取れる設計は、そう多くありません。
表層は「観光振興の委託」、本質は「収益事業として回るかを試させていること」
僕がこの仕様書を読んで思ったのは、市が答えを持っていないという前提です。
レンタサイクルの利用料収入を受注者に渡す。しかも受付やメンテナンスも受注者が行う。これは実証実験という名前ですが、実質的には「この場所で自転車貸出は事業として成り立つか」を民間に試させる形になっています。
質問回答書を見ると、その姿勢がはっきりします。事業者から「道の駅等の既存施設スタッフとの連携運営は可能でしょうか。また、受託者による常駐が必須でしょうか」という質問が出ました。市の回答はこうです。「現在は、道の駅等とのスタッフの連携運営は想定しておらず、仕様書に記載のとおり、受付やメンテナンスなど受注者で体制を整えることを想定しています」。
道の駅のスタッフは使えない。受注者が人を置く。電動アシスト自転車5台を最低30日、拠点に人を配置し続けるコストは、350万円の中で無視できない比重になります。
そもそも道の駅アリスト沼隈を拠点に指定したのは、鞆未来トンネルの開通と関係があるでしょう。2025年3月に開通したこのトンネルで、沼隈町側から鞆へのアクセスが変わりました。仕様書は今後の計画として「道の駅アリストぬまくまの再整備、鞆地区東西交通交流拠点の新設」を挙げています。
僕が評価したいのは、再整備の前にデータを取ろうとしている点です。施設を作ってから使われ方を考えるのではなく、今の周遊実態を測ってから再整備の中身を決める順序になっています。
まあ、それでも350万円で7か月間の常駐体制と3か月のキャンペーンを回すのは、かなり厳しい設計だと思います。利用料収入を当て込めるとはいえ、電動アシスト自転車5台の稼働で人件費が出る水準には届きません。

質問回答に出た「候補施設の紹介はしない」という線引き
質問回答書の3つめが、僕にはいちばん実務的に見えました。
事業者の質問はこうです。「周遊スポットへの協力要請及び説明は受託者が行うこととされていますが、市から候補施設・候補事業者の紹介や事前調整支援は受けられるのでしょうか」。
市の回答。「候補施設及び事業者については、受注者の知見を活かした選定を基本としています。ただし、仕様書にも記載のとおり最終的には発注者と協議のうえ決定することとしています」。
つまり、10か所以上のスポットを自力で開拓してくださいという回答です。市が事前に地元の店や施設に話を通しておくわけではありません。
意外と、この線引きが応募できる事業者を決めています。鞆町と沼隈町の店や施設に、すでに関係を持っている事業者でなければ、7月末に申し込んで秋のキャンペーンに10か所を並べるのは間に合いません。地域の事情を知らない事業者が価格だけで入ってくることは、実質的に難しい設計です。
シェアサイクルについては柔軟な回答が出ています。「アリストぬまくまを拠点とし、レンタサイクルの実証実験を目的としていますが、シェアサイクルのステーションを確保できるのであれば可能とします」。既存のシェアサイクル事業者が自社ステーションを持ち込む提案も受け付ける、ということです。


「参加者が3者を超える場合」という一次審査の条件
選考スケジュールに、目立たないが重要な注記があります。一次審査(書面審査)は8月3日(月曜日)で、そこに「※参加者が3者を超える場合」と付いています。
3者以下ならプレゼンテーションだけで決まる。市が4者以上の応募を前提にしていない、と読めます。
僕はこれを、応募が集まりにくい業務だという発注側の見通しだと受け取りました。350万円という規模、地域との関係が必要なスポット開拓、現地常駐を伴う自転車貸出。この3つが揃う事業者は、福山周辺で何社もないでしょう。
共同事業体での参加も認められていますが、条件が付いています。「単独で応募した団体は、共同事業体の構成員、協力者となることはできない」「複数のグループにおいて、同時に構成員、協力者となることはできない」。地域の事業者が複数のグループに掛け持ちで入ることを防ぐ規定です。
追いかけるべき点
僕が追いたいのは3つです。
ひとつめは、応募が何者あったかです。8月10日の結果通知で受注者が分かります。1者応募だったのか、複数の競争になったのかは、この事業の設計が現実的だったかどうかの答えになります。
ふたつめは、キャンペーンの実施時期です。仕様書は「最も効果的・効率的に訴求できる時期を選定のうえ実施」「概ね3か月以上」としています。契約が8月なら、秋から年明けにかけての3か月になるでしょう。鞆の観光シーズンと自転車で走れる季節の折り合いをどう付けるかが見どころです。
みっつめは、行動履歴データの取り方です。仕様書は「参加者の行動履歴データを取得すること」と書くだけで、手法を指定していません。スタンプラリー型のアプリか、GPSログか、スポットでのQR読み取りか。ここは提案の中心になるはずで、取れたデータの粒度が、道の駅再整備や鞆の交通交流拠点の設計に効いてきます。
成果物の事業報告書は電子データと紙5部、提出期限は2027年2月19日(金曜日)です。
参照した主な情報
– 福山市「福山市南部周遊観光促進業務委託プロポーザルについて」
