強烈にむかつく空港と、福山駅で降りる日
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2026年8月、星野リゾート代表の星野佳路と堀江貴文の対談が、堀江のYouTube「ホリモンチャンネル」に載った。新幹線で観光客増加のはずが…星野リゾート代表と語る交通網と観光産業。話の芯は北陸と関空で、途中で堀江が広島空港に落ちる。「広島のちょっと遠いやつ」「強烈にむかつくんですよ、あの空港」。よく行くのは尾道や福山で、そこまでストレスではない。広島市に行くとき、むかつく。
空港公式の時刻表は、広島駅新幹線口まで45〜50分、1,500円。福山駅までは65分、1,600円。尾道駅は60分、4,000円。数字だけ並べると、広島駅の方が近い。堀江が怒っているのは、分の長さだけではない。広島に着いたつもりが、三原市本郷の丘の上だ、という入口のズレだ。

遠い、の中身は広島市への入口
表層は、芸能人の空港愚痴だ。本質は、空港の名前と、降りたあとの都市がずれていることだ。広島空港の公式アクセス図は、空港を白市駅の先に置く。山陽本線の白市からバス15分。三原駅からはリムジン38分、1,000円。福山駅は図の右、三原のさらに東だ。広島駅は左の黒丸。空港は二つの都市のあいだの内陸にいる。
星野と堀江の対談では、日本に空港と新幹線が同じターミナルで繋がる場所が一つも無い、という話が先にある。スイスでは国際空港と幹線鉄道がそのまま繋がる。静岡空港は東海道新幹線の真下なのに駅が無い。北九州空港にも新幹線を欲しい、と堀江。広島空港はその列の、中国地方の実例だ。山陽新幹線は三原にも福山にも広島にも停まる。停まる駅と、滑走路は別の丘だ。
僕は最初、むかつく、という言葉だけが強いと思った。公式の45分を読むと、東京の成田ほどでは無い。無いのに残るのは、広島市に用がある客が、本郷でバスに乗る設計だ。設計を、備後の人間は日常で知っている。知っている側から見ると、堀江の怒りは広島市の玄関の話であって、福山駅前の話ではない。
1993年に、玄関は50キロ東へ移った
広島空港は1993年10月29日、三原市本郷町で供用を始めた。住所は本郷町善入寺。広島市中心部から東へ約50キロ、と百科事典型の整理が残る。開港と同時に、広島市西区にあった旧広島空港は広島西飛行場へ名を変えた。西飛行場の定期便はのちに消え、2011年に廃港とヘリポート化が決まった。決まったあと、ジェットの玄関は本郷に一本化された。一本化された名前は、いまも「広島」だ。名前と、50キロ東の丘は、開港から30年以上ずれている。
ずれを埋める鉄道は、何度か検討されて駅で搭乗手続き、という案も出た。出た案は、2018年前後に鉄道アクセス断念として報じられている。断念のあとに残ったのが、白市駅からバス15分と、各方面のリムジンだ。スカイレール(広島短距離交通瀬野線)は2024年4月30日で廃止されたが、あれは瀬野の住宅団地の懸垂式で、空港アクセスではない。空港アクセスではないものを、本郷の遠さの説明に混ぜない。混ぜないまま残るのは、新幹線の三原・東広島・広島と、滑走路が別の丘だ、ということだ。

福山で怒らない理由は、新幹線口があること
堀江は、尾道や福山までならストレスではない、と言った。そこまで、の中身は山陽新幹線だ。福山駅に新幹線の改札がある。東京や新大阪から降りる客は、空港に寄らない。寄らない動線が、備後の観光と仕事の入口になっている。入口が駅だと、リムジンの65分は、飛行機で広島空港に降りた人の話になる。
2026年8月1日から31日まで、県は福山市内と広島空港のリムジンを1日3往復増便すると書いた(7月29日付)。増便は、備後から空港へ行く側の本数だ。本数を足すことと、空港を広島駅の隣へ動かすことは、別の工事だ。別の工事を、堀江はロビー活動の話に繋げる。ITの仕事のころは政治家に働きかけなかった。ロケットや予防医療を始めて、インプットしないと気づいてもらえない、と続ける。気づいてもらえない対象は、広島市への遠さだ。遠さを、福山に空港を作れ、と読み替えると、対談の順番が崩れる。
担当課の説明では、福山駅前から空港へは既存のリムジンと乗合タクシーがある。乗合タクシーは60分、4,500円。JRで白市まで出てバスに乗り換えると85分、1,660円、と空港公式は並べる。ある、ということは、備後からも空港は使える。使えることと、広島市の玄関として快適かは、同じ「広島空港」でも客の向きが違う。向きが福山行きなら、新幹線の方が先に立つ。先に立つ改札を、空港批判の材料にしない。材料にするなら、飛行機で本郷に降りて広島市へバスで入る客の話に限る。
8月の赤字便は、備後から乗る人の話だ
県空港振興課の7月29日付は、8月1日から31日まで福山市内=広島空港を1日3往復増やす、と書いた。夏休みの旅行と帰省、が理由だ。福山駅前発は、増便後に5:50、7:30、8:55、10:35、11:55、13:40、14:30、15:25、18:35などが並ぶ。空港発の最終は21:50発、福山駅前22:55着、と県の表にある。赤字が今回の増便だ、とも注がある。注の先は空港公式の時刻表だ。時刻表の所要は福山駅65分、1,600円のままだ。
65分は、広島駅の45〜50分より長い。長い枝を8月に足すのは、備後から飛行機に乗る人の本数だ。本数を足すことと、本郷を広島市の隣に動かすことは、同じ予算ではない。同じ予算に見えるのは、「広島空港問題」という言葉で福山も広島市も一括するときだけだ。一括を、堀江の発言はしていない。していない発言を、福山に空港を、と伸ばすと、対談の順が崩れる。
三原駅からは38分、1,000円。空港にいちばん近い新幹線駅は、広島でも福山でもなく三原だ。三原で降りてリムジンに乗る動線は、公式がすでに置いている。置いている動線を、備後の人間は「近い日は三原」と使い分ける。使い分けがある街で、堀江が福山では怒らない、と言うのは、新幹線口で用が足りる日の話だ。足りる日を、空港批判の材料にしない。

空港図の右端に、福山はある
公式の広域図で、福山駅は空港の右、三原の先に小さく載る。載り方は、空港の主客が広島市側だ、と読める。主客が広島市なら、45〜50分のリムジンが本線で、福山65分は枝だ。枝を8月に増やすのは、夏休みの搭乗に合わせた運用だ。運用は正しい。正しい運用のあとに残るのは、新幹線駅と滑走路が同じ屋根の下に無い、という対談の宿題だ。
星野は、空港と新幹線が同じ駅で同じターミナルに入れることが、日本にとって大事なテーマだ、と返す。返す場所は北九州の話の続きで、広島空港の固有名は堀江が足した。足した固有名を、備後で読むと、福山はすでに新幹線のターミナルを持っている。持っている側が欲しいのは、新しい滑走路より、本郷から広島市へ入る客が怒らなくなる接続か、飛行機の行き先を福山で完結させる便の見え方だ。見え方を、便数の確定値としてここでは書かない。書いていない便数の代わりに残るのは、駅で降りられる街と、空港のあとにバスが要る街の差だ。
図の主客は広島駅で、福山は右端だ
空港公式の広域図は、広島駅から海田市、白市、空港へ太い線を引く。福山駅は右の方に、三原の先で小さく載る。載り方は、空港会社の主客が広島市側だ、と読める。読める主客と、8月の福山増便は矛盾しない。矛盾しないのは、主客の本線を維持したまま、夏休みだけ枝を太くする、という運用だからだ。運用のあとに残る宿題は、星野が言った「同じターミナル」だ。同じターミナルは、福山駅の新幹線改札にはすでにある。ある改札と、本郷の滑走路は、30年結ばれていない。
尾道駅からの空港アクセスは、公式で60分、4,000円だ。4,000円は福山リムジンの1,600円より高い。高い行を、堀江の「尾道とか福山」は同じストレスの低さで括っている。括っている中身は、空港ではなく山陽新幹線だ。新幹線で用が足りる日は、4,000円の乗合も1,600円のリムジンも、計算に乗らない。乗らない日が、備後の観光の既定だ。既定を、空港の増便は壊さない。壊さない増便を、広島市の遠さの解決とも呼ばない。
僕は本郷のバス停の行列を、毎週数えているわけではない。数えていない行列の長さを、成田や関空と同じにはしない。しないまま言えるのは、名前が広島で、住所が三原市本郷町だ、ということだ。住所と名前の差を、堀江はむかつく、と短く言った。短い怒りを、福山駅の改札で受け取る必要は無い。受け取る必要があるのは、広島市に用がある客と、空港会社と、県のアクセス課だ。

対談が福山に残すもの
対談の空港パートは短い。短いあとに、北海道とニセコと水上飛行機へ話は流れる。流れる前に置かれた広島は、日本の空港が都市と線路から外れている、という大きい話の実名だ。実名を福山で使うなら、新幹線口を持っていることを先に書く。先に書いたうえで、本郷の空港は広島市の遠さの問題として残す。残し方は、8月の増便を否定しない。否定しない増便は、備後から乗る人の話だ。乗る人の話と、広島市に着いたつもりでバスに揺られる人の話は、同じ時刻表の別の行だ。
とにかく、堀江が福山では怒らない、と言ったことは、駅がある街の側にとっては褒め言葉に近い。近い言葉を、新しい空港誘致の見出しにしない。しない代わりに、山陽新幹線の改札を、観光案内の一番上に置き続ける。置き続けた先で、飛行機が要る日は公式の65分を見る。見る時計と、広島市へ入る客の時計は、同じ空港でも針が違う。
僕が見たいのは、広島空港と書いてあるチケットを持った人が、本郷で「まだ広島では無い」と驚かなくなる接続だ。接続の設計図は、県と空港会社のページが正本だ。正本の45分と65分を、対談のむかつく、の隣に置いておく。置くと、怒りは福山駅の問題ではなく、名前と場所の問題だ、と読める。僕は福山駅の改札を出るとき、空港の話をしない。しない日が、堀江の「ストレスではない」に近い。
ロビー活動の対象は、福山駅ではない
堀江は、ITのころは政治家に働きかけなかった、ロケットや予防医療でインプットが要ると分かった、と言う。言う対象は、広島市へ空港経由で入る遠さだ。遠さに気づいていない政治家、というのが続きだ。続きを福山市政の宿題にすると、駅がある街が、無い接続の責任を負う。負わない。負うのは、空港の名前を広島のまま本郷に置いている国と県と、広島市へ入る客の動線を組む側だ。
1〜3年で僕が見るのは、次だ。白市—空港のバス15分が、鉄道断念のあとも公式の最短接続として残るか。福山リムジンが8月以外も増便のままか。三原駅38分を、空港アクセスの主案内に昇格させるか。三点は、福山駅の改札の混み方より先に、県と空港会社のページで動く。動いたあとも、新幹線で福山に降りる日は、むかつく理由が無い。無い理由を、対談の空港パートの結論にしておく。
広島バスセンターからは55分、1,500円。呉駅前は58分、西条駅は25分、700円。西条の25分は、空港が東広島の端に近いことを示す。示す数字の隣で、広島駅45〜50分は「市内」にしては長い。長いことを、備後の人間は30年前から知っている。知っている側が8月に増えたのは、5:50の始発と21:50の最終だ。始発と最終は、帰省と搭乗の枝だ。枝を、広島市の玄関の解決と呼ばない。呼ばないまま、県の表は使ってよい。乗合タクシーは福山駅60分、4,500円。JR白市経由は85分、1,660円。安いが長い行と、高いが少し短い行が、リムジン65分の両脇にある。両脇を、8月の赤字便は置き換えない。置き換えないまま、5:50の福山駅前は空港6:55に着く。着く便を、帰省の荷物は使える。

まあ、尾道も福山も、新幹線で降りられる。降りられることが、むかつかない理由だ。理由を、空港批判の合唱に溶かさない。
