路線バスを「維持する路線」と「他モードへ転換する路線」に分類する業務を1,879万9,000円で公募——AOポスターで可視化する条件付き

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100点のうち75点が「業務内容」に配分された評価基準 [自治体の公式公開情報] 出典:福山市「地域公共交通ネットワーク再編検討業務 評価内容・評価基準」 ※著作権は原権利者に帰属します。出典表示は許諾に代わるものではありません。掲載に関するご指摘がございましたら、お問い合わせいただければ確認のうえ削除・訂正に対応します。

福山市が、地域公共交通ネットワーク再編検討業務の公募型プロポーザルを実施しました。委託費の上限は1,879万9,000円(税込)。参加申込の受付期間は2026年7月16日(木曜日)から7月29日(水曜日)まででした。業務履行期間は契約締結の日から2027年(令和9年)2月19日までです。

発注元は都市交通課で、選定は「福山・笠岡地域公共交通活性化協議会 バス共創プラットフォーム」の枠組みで行われます。

僕がこの公募で手を止めたのは、仕様書に書かれた業務内容の一行です。「路線バスの運行を維持する路線(幹線・支線の区分を含む)と他交通モードへ転換する路線を分類し」——つまり市は、バス路線を残すか残さないかの線引き作業を外部に発注しています。

何を分析させ、何を作らせるのか

業務項目内容中間提出
過年度実証事業の評価2024〜2025年度のバス利用者拡大実証事業を分析・評価2026年10月16日
バス路線の利用者数の集計・分析市内全バス路線・系統ごとに利用者数、利用属性、乗降場所を集計2026年10月16日
ネットワークの再編検討維持路線と転換路線の分類、再編案の作成2026年11月30日
今後の取組の提案再編実現に向けた実証事業を複数提案2026年11月30日

最終納品はいずれも2027年2月19日です。対象地域は福山市内全域。

分析の材料として市が指定しているのが、広島県モビリティデータ連携基盤ダッシュボードです。仕様書には「本年11月に最新のICOCAデータが反映予定」と書かれています。つまり交通系ICカードの乗降データを使って、系統ごとの利用実態を見る前提になっています。

いや、僕がここで引っかかったのは、その前段の注記です。「年度によって運行便数が異なることから、利用者数の単純比較ではなく運行便数の増減を考慮する」。過去の実証事業を評価するとき、便数を増やしたから利用者が増えたのか、施策が効いたのかを分けろという指示です。

さすがに、これは発注側が実証事業の評価の難しさを分かって書いている条文だと思いました。「運賃無料ウィーク」のような施策は、実施中は必ず数字が上がります。問題はその後に定着したかどうかで、仕様書は「バス利用のきっかけや定着につながっているかを分析・評価すること」と明記しています。

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業務の目的と対象地域を定めた仕様書の冒頭部分 [自治体の公式公開情報] 出典:福山市「地域公共交通ネットワーク再編検討業務委託仕様書(案)」 ※著作権は原権利者に帰属します。出典表示は許諾に代わるものではありません。掲載に関するご指摘がございましたら、お問い合わせいただければ確認のうえ削除・訂正に対応します。

表層は「調査業務の発注」、本質は「減便の根拠づくりを先に整えていること」

僕がこの公募を読んで思ったのは、順序の話です。

普通、路線の見直しは「赤字だから減らします」という形で表に出ます。そのとき住民説明会で必ず出るのが「なぜこの路線なのか」という問いで、答えられないと話が進みません。

今回の業務は、その問いに答えるための材料を先に作らせています。仕様書の再編検討の項には、こう並んでいます。人流データ、各エリアの将来人口、バス乗務員数、そして「福山市立地適正化区域の都市機能誘導区域との整合を図ること」。

つまり、どこに人が住み続けるつもりなのかという都市計画側の線と、バス路線の線を合わせろという指示です。

そもそも福山市は市域が広く、旧町域を含む合併自治体です。全域に等しくバスを走らせ続けることは、乗務員数の制約だけでも難しい。仕様書は転換路線について「乗合タクシーやパークアンドライドなどの代替手段を併せて」示すよう求めています。切るだけでは終わらせないという前提です。

僕が評価したいのは、段階を刻ませている点です。「再編案の最終形態から再編に要する年数などを見込み、必要に応じて5年後、10年後など段階的な再編案を作成すること」。いきなり最終形を出すのではなく、途中の姿を用意させています。

まあ、それでも実際の減便の場面で反発が消えるわけではないでしょう。ただ、根拠のない見直しと根拠のある見直しでは、話の始まり方が違います。

「AOポスター程度の大きさで可視化」という条件

仕様書の中で、僕がいちばん実務的だと感じた一文がこれです。「再編案については、AOポスター程度の大きさで可視化すること。また、発注者で編集可能な形式で作成すること」。

AOサイズは841mm×1189mm。会議室の壁に貼って、複数人が同時に指をさせる大きさです。

そして「発注者で編集可能な形式」。受注者が納品したPDFを市が読むだけでは足りない、市の職員が後から線を引き直せるデータで出せという指定です。

意外と、この2行が業務の性格を決めています。成果物が報告書として棚に入るのではなく、協議会や住民説明の場で広げられる前提で作られる。

評価基準を見ると、この方向がさらにはっきりします。配点100点のうち、「業務内容」に75点。内訳はデータの分析・評価に30点、ネットワーク再編の考え方に35点、今後の取組提案に10点です。組織の実績や体制は「業務遂行力」の15点に押し込められ、プレゼンテーションと独自提案が10点。

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委託費の上限1,879万9,000円を明記した実施要領 [自治体の公式公開情報] 出典:福山市「地域公共交通ネットワーク再編検討業務 実施要領」 ※著作権は原権利者に帰属します。出典表示は許諾に代わるものではありません。掲載に関するご指摘がございましたら、お問い合わせいただければ確認のうえ削除・訂正に対応します。
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参加資格と選考スケジュールを定めた実施要領の続き [自治体の公式公開情報] 出典:福山市「地域公共交通ネットワーク再編検討業務 実施要領」 ※著作権は原権利者に帰属します。出典表示は許諾に代わるものではありません。掲載に関するご指摘がございましたら、お問い合わせいただければ確認のうえ削除・訂正に対応します。

参加資格にひとつ、実質的な絞りがある

評価基準の「類似業務の実績」の欄に、こう書かれています。「福山市と同等又はそれ以上の人口規模を有する他都市における類似業務の実績があり」。

福山市の人口は約45万人。これと同等以上の都市で公共交通の再編検討をやった実績を求めると、応札できる事業者はかなり限られます。地域のコンサルタントではなく、全国規模の交通計画コンサルタントが想定されているでしょう。

僕はこれを、妥当な絞りだと読みました。45万人規模の全路線を扱うには、データ処理の量そのものが小さな事務所では回りません。

一方で気になるのは、地域の事情をどこまで拾えるかです。評価基準の1項目目は「福山市の公共交通の現状・課題、現在の福山市の取組の方向性など、路線バスだけでなくあらゆる交通モードに対する理解が十分であるか」。全国の実績を持つ事業者が、福山の地形と生活動線をどれだけ具体的に語れるか——プレゼンテーションで見られるのはそこだと思います。

追いかけるべき点

僕が追いたいのは3つです。

ひとつめは、10月16日の中間報告です。過年度実証事業の評価とバス路線の集計・分析が、この日に中間として出ます。ここで「実証事業は定着につながらなかった」という評価が出るかどうかが、その後の再編案の性格を決めます。

ふたつめは、11月30日に中間提出される再編案の粒度です。系統単位まで踏み込むのか、エリア単位で止めるのか。系統名が入った資料が出れば、影響を受ける地域が具体的に見えます。

みっつめは、成果物の公開範囲です。仕様書には「成果品の管理及び帰属は、全て発注者とし、受注者は発注者の承認なしに他に成果品を公表、貸与及び使用等をしてはならない」とあります。市が公開すると決めれば公開されますが、再編案という性質上、公開の判断そのものが政治的な問題になります。

参加申込は7月29日で締切済みです。契約締結後の進捗は、バス共創プラットフォームの会議資料で追えるはずです。

参照した主な情報

福山市「【公募型プロポーザル】地域公共交通ネットワーク再編検討業務について」