金江町でクローバーを育てる元看護師夫妻——町名に「夢かなえる」を掛けた地域シンボルづくり
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金江(かなえ)町で農業を営む石井元喜さん(37)、詩織さん(38)夫妻が、クローバーの栽培に力を入れています。町名に「夢をかなえる」を掛け合わせ、幸運の象徴とされるクローバーを地域の新たなシンボルにしようという発想です。中国新聞が7月下旬に伝えています。
二人が営むのはSOL FARM(ソルファーム)。公式サイトによると、13年間の看護師経験を持つ夫妻が2023年に設立した農園で、モリンガやキャッサバ、ビーツ、レモングラス、ケールといったスーパーフードを無農薬で育てています。僕はクローバーの話から入ったのですが、農園の中身を読み進めるうちに、ここは「看護師が農業に転職した」という単純な話ではないな、と一瞬で思い直しました。とにかく、看護と畑を同じ線でつないでいる点が独特です。

「畑のナース」という名乗り——病気になってからの治療と、ならない体づくりのあいだ

SOL FARMの公式サイトには、設立の動機が明記されています。総合病院で長く看護師として働くなかで、「病気になってからの治療」だけでなく「病気にならない体づくり」の大切さを実感した、という説明です。食の安全と栄養に着目し、自分たちの手で安全な食材を育てることを決めたとしています。
夫の元喜さんは1989年に福山市で生まれ、総合病院で13年間勤務した後、2023年にUターンして農園を設立しました。詩織さんは現在もクリニックに勤めながら、農業と医療と街をつなぐ活動に取り組んでいます。夫婦のどちらかが医療の現場に残っている構成は、収入面でも情報面でも現実的な選択です。
僕が面白いと思ったのは、「畑のナース」という言い方です。さすがに看護師の資格で診療の代わりをするわけではありませんが、予防の側に軸足を移した名乗りだと読めます。予防と食を結ぶ発想自体は珍しくありませんが、実際に自分で畑を持つ人はそう多くない。企業の健康経営の担当者からすると、こういう地元の生産者は連携先の候補になり得ます。
約5千平方メートルでキャッサバとモリンガ——25種から10種へ絞る判断

地域情報誌のインタビューによると、農地は金江町の約5反(約5千平方メートル)。キャッサバはサツマイモに似た作物で、東南アジアやアフリカでは主食にもなりますが、日本では冬越しが難しく流通は多くありません。昨年は500〜600本を挿し木し、およそ半分が収穫にこぎ着けたとしています。
同じインタビューでは、昨年25種を育てたものの今年は10種に絞る、という話も出てきます。ここに僕は一番リアリティを感じました。珍しい作物を並べるのは楽しい一方で、直売中心の販路では品目が増えるほど管理と説明のコストが上がります。意外と、絞る判断のほうが難しい。
販売先はやまさきショップ各店や道の駅アリストぬまくま、マルシェなど、想いを伝えられる場所に置いてもらう方針だといいます。大三島の無農薬レモン畑も任されるようになったとのことで、活動範囲は市外にも広がっています。
シンボルづくりが続くかどうかは、来年の話になる——地域の象徴が根づく条件

町名に言葉を掛けたシンボルづくりは、思いつきとしては軽やかですが、続けるとなると別の話です。クローバーは多年草で管理の手間は比較的軽い一方、景観として成立させるには一定の面積とタイミングが要ります。プランターから始めるのは現実的な入り方でしょう。
編集としては、この種の取り組みが定着するかどうかは、二年目に誰が加わるかで決まると見ています。僕はシンボルづくりを一過性の企画だと思い込んでいたので、販路と栽培の話とつながっている点は知りませんでした。生産者一組で完結している段階から、学校や自治会、直売所が関わる段階へ進めるか。地域のシンボルは、名乗った瞬間ではなく、他人が使い始めたときに成立します。
観測できる次の一手は、SOL FARMの公式サイトに載る収穫体験やイベントの告知です。6月には玉ねぎとラディッシュの収穫体験が案内されていました。クローバーが同じ枠に並ぶようになれば、金江町のシンボルという話は具体的な行事になります。
参照した主な情報
– 中国新聞デジタル「福山で育てる『夢かなえる』クローバー Uターン農家夫妻の挑戦」 – SOL FARM(ソルファーム)公式サイト – SOL FARM 農園について – ぷれすしーどWEB「SOL FARM/石井元喜」
