福山城伏見櫓の「移築元」を京都で調査する業務を公募、委託費上限498万8,500円——目的に「国宝化」が明記された

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実施要領の冒頭。業務の目的に「国宝化に向けて市民の機運を醸成」と記されている [自治体の公式公開情報] 出典:福山市公式サイト(重要文化財福山城伏見櫓移築元調査支援及び測量調査業務委託プロポーザル実施要領) ※著作権は原権利者に帰属します。出典表示は許諾に代わるものではありません。掲載に関するご指摘がございましたら、お問い合わせいただければ確認のうえ削除・訂正に対応します。

福山市が、重要文化財福山城伏見櫓の移築元調査支援および測量調査業務について、公募型プロポーザルを実施しています。掲載日は2026年7月22日です。

実施要領に書かれた業務の目的が、この案件の性格を決めています。

「京都伏見城からの移築が物的に裏付けられている国指定重要文化財福山城伏見櫓について、新たな知見を得るために調査を実施し、その価値や魅力について理解を深め、後世に確実に継承するとともに国宝化に向けて市民の機運を醸成に繋げるもの」。

僕がここで止まったのは、最後の一節です。「国宝化に向けて」。

委託費上限498万8,500円、履行期間は2027年3月31日まで

項目内容
業務名重要文化財福山城伏見櫓移築元調査支援及び測量調査業務
業務履行期間契約締結の日から2027年(令和9年)3月31日まで
委託費上限4,988,500円(消費税および地方消費税相当額を含む)
選定方式公募型プロポーザル方式。特定後に協議を行い随意契約
担当福山市文化振興課 文化財担当(084-928-1278)

委託費の上限が498万8,500円です。500万円をわずかに下回る額。

僕はこの端数の付け方に、予算編成の跡を見ます。500万円という区切りには、契約手続きや決裁の区分が絡むことがあります。上限をこの額に置いたのは、そこに理由があるはずです。

選定方式の説明が明快です。「本業務は、価格のみによる競争では目的を達成できないため、専門的な知識・経験等を有する業者からの提案を広く公募し、プレゼンテーションを行って提案内容を評価するプロポーザル方式によって受注候補者を特定する」。

価格競争にしない理由が、専門性です。城郭建築の移築元を調べる仕事は、安く請け負える業者を探す話ではありません。

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公告文の紙面 [自治体の公式公開情報] 出典:福山市公式サイト(公告文) ※著作権は原権利者に帰属します。出典表示は許諾に代わるものではありません。掲載に関するご指摘がございましたら、お問い合わせいただければ確認のうえ削除・訂正に対応します。

表層は「調査業務の公募」、本質は「国宝への申請材料を作る作業」

伏見櫓は、福山城に現存する建物のひとつです。1622年の福山城築城時に、京都の伏見城から移されたと伝えられてきました。

伝承だけではありません。1954年の解体修理のときに、部材から「松ノ丸ノ東やくら」と書かれた墨書が見つかりました。伏見城松の丸にあった東側の櫓、という意味です。これが移築を裏付ける物的証拠とされ、国の重要文化財に指定されています。

市の実施要領が「京都伏見城からの移築が物的に裏付けられている」と断定的に書いているのは、この墨書があるからです。

いや、ここが今回の調査の面白いところです。移築されたことは分かっている。ただ「移築元」がどうだったかは、まだ分かっていません。

伏見城は徳川家康の死後に廃城となり、建物は各地に分散しました。現在の京都市伏見区には明治期に築かれた伏見桃山城の模擬天守があり、本来の伏見城の遺構は地下に埋まっています。

添付資料に「02-3_(参考)2025年度伏見城跡立入調査」というPDFが含まれています。つまり市は昨年度、伏見城跡に立ち入る調査を既に実施しています。今回の業務はその継続です。

さすがに、福山市が京都市内の城跡を調査するというのは、自治体の事業としては珍しい構図です。自分の市にある建物の来歴を確かめるために、他府県の遺跡を調べる。

意外と重要なのが「測量調査」という言葉です。伏見櫓そのものの寸法を測り、伏見城跡の遺構の寸法と照合する作業でしょう。櫓の柱の間隔と、伏見城跡で見つかっている礎石の配置が一致すれば、どこに建っていたかが特定できます。

「国宝化」を目的に書くことの意味

僕がこの案件で最も注目するのは、目的に国宝化が明記されていることです。

国宝は、重要文化財のうち特に価値の高いものを指定するものです。重要文化財から国宝への昇格は、文化庁の審議を経て決まります。自治体が申請して認められるという単純な手続きではありません。

そのうえで、昇格には材料が必要です。建物の価値を裏付ける新しい学術的知見があれば、審議の対象になりやすい。今回の調査は、その材料を作る作業です。

そして市は「市民の機運を醸成に繋げる」とも書いています。文章としてはねじれていますが、意図は読めます。国宝化を目指すには、市民の側に「国宝にしたい」という支持が必要だという判断です。

まあ、これは正直な書き方です。学術調査の成果だけで国宝が決まるわけではなく、地元の熱意が働くことは実際にあります。

福山城は2022年に築城400年を迎え、天守の大規模改修が行われました。そのタイミングで市は福山城への投資を続けており、伏見櫓の国宝化はその延長線上の目標でしょう。

現在、広島県内の国宝建築は厳島神社の関連建物などに限られます。福山市内に国宝建築があるかどうかは、市の観光戦略にも関わってきます。

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提案者が提出する様式集の紙面 [自治体の公式公開情報] 出典:福山市公式サイト(様式集) ※著作権は原権利者に帰属します。出典表示は許諾に代わるものではありません。掲載に関するご指摘がございましたら、お問い合わせいただければ確認のうえ削除・訂正に対応します。
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実施要領の続き。参加資格や評価の手順が記載されている [自治体の公式公開情報] 出典:福山市公式サイト(実施要領・評価基準) ※著作権は原権利者に帰属します。出典表示は許諾に代わるものではありません。掲載に関するご指摘がございましたら、お問い合わせいただければ確認のうえ削除・訂正に対応します。

「受託者に求める考え方について」という文書がある

添付資料の一覧に、少し変わった文書が含まれています。「05_受託者に求める考え方について [PDFファイル/37KB]」。

37KBという小さなファイルです。仕様書(95KB)より小さい。

僕はこの文書の存在を、市の慎重さの表れだと読みました。仕様書には何をするかを書きます。評価基準には何を評価するかを書きます。そこに収まらない「考え方」を別立てにしているのは、この業務が数量では測れない部分を含むからでしょう。

文化財の調査は、成果が読めません。調べた結果、新しいことが何も分からない可能性もあります。そのときに委託業者の責任にはできない。

添付資料は全部で9本あります。公告文、実施要領・評価基準、仕様書、調査範囲、2025年度伏見城跡立入調査の参考資料、様式集(PDFとWord)、質問書(PDFとWord)、受託者に求める考え方について。

調査範囲のPDFが454KBあるので、図面が含まれているようです。

追いかけるべき点

僕が追いたいのは3つです。

ひとつめは、提案者が何者集まるかです。城郭建築の測量と文献調査を両方こなせる事業者は限られます。同じ市の別案件では、ふくやま美術館・書道美術館の大規模改修基本計画策定業務のプロポーザルに「1者」しか提出がなく、株式会社乃村工藝社と契約しています。専門性の高い業務では応募が集まりにくい構造があります。

ふたつめは、2027年3月31日までの成果です。1年弱で伏見城跡の調査と伏見櫓の測量を終える計画です。この期間で国宝化の材料になる知見が出るかどうか。

みっつめは、国宝化への具体的な工程です。今回は調査業務で、申請そのものではありません。調査が終わってから何年かけて申請に進むのか、市はまだ示していません。

参加を希望する事業者向けの資料は市の公式ページからPDFで公開されています。問合せは福山市文化振興課 文化財担当(084-928-1278)です。

参照した主な情報

福山市「重要文化財福山城伏見櫓移築元調査支援及び測量調査業務に係る公募型プロポーザルの実施について」福山市「ふくやま美術館及びふくやま書道美術館大規模改修基本計画策定業務に係る公募型プロポーザルの実施結果及び契約内容について」