
2026年4月7日、双日テックイノベーション(STech I)は、広島県福山市においてクラウド型ワークマネジメントツール「Asana」の導入・定着支援を行ったと発表しました。同社の説明では、福山市は数年前から一部部署での試行を経て対象を段階的に広げ、2025年末時点で約3000名の職員が利用できる体制へ拡大したうえで、部署ごとに分散していた業務管理をAsana上に統一し、「誰が・何を・いつまでに」を共通言語として可視化する取り組みを進めているとされています。
数値や職員の発言の詳細は、主にAsanaの公式事例ページに整理されています。本稿では、同ページと双日テックイノベーションのプレスリリースに明示された範囲で、経緯・効果・今後の方針をまとめます。 https://www.sojitz-ti.com/ja/press/fukuyama_asana.html https://asana.com/ja/case-study/fukuyama-city
導入の背景と経緯
福山市は2021年に総合計画「福山みらい創造ビジョン」を掲げ、行政のデジタル化や働き方改革とあわせて、縦割りによる連携の難しさや情報の分散といった課題への対処を進めてきました。Asanaの公式事例では、中四国でも人口規模の大きい都市としての前提に触れたうえで、約120部署規模の組織で協業が必要になる一方、全体のプロジェクト像が把握しづらいことが課題だったと整理されています。
そのうえで、2022年度4〜6月に事業進捗管理向けのデジタルツール選定が行われ、複数部局・職級の選定チームが候補3種を比較した結果、外部連携やポートフォリオ、目標管理機能に加え、日本政府のセキュリティ基準に準拠していたことも含め採用が決まったと説明されています。
運用面では、2022年7月に導入が始まり、同年8月に400、9月にさらに300増えて700アカウントへ拡大したとされています。双日テックイノベーションのプレスでは、まず約60ライセンスからトライアルを開始し、同社の約1000名規模の全社導入経験を踏まえて、部門横断プロジェクトでの試行、研修・オンボーディング、チャンピオン育成、成果が見えた部門からの順次拡大といったステップで定着支援を行ったと整理されています。
Asanaの事例では、庁内にはもともとセキュリティインシデントや機器故障対応のため部署ごとに1〜3名、計約240名の「ITリーダー」が置かれていたとしたうえで、2023年度以降にこれを「デジタル化推進委員」へ改め、業務の現状把握やデジタル技術を活用した企画立案などを役割に加えていく方針が示されています。導入初期には、従来の書類運用とAsana運用が重なる過渡期の負担が課題として挙がったことも触れられており、プロジェクトマネジメント研修や、CIOを担う副市長によるメッセージ発信など、トップと現場の両面からの浸透策が続いていると説明されています。

業務プロセスでどう変わったか
Asanaの事例紹介では、副市長への重要業務の進捗報告が、各レイヤーでExcel資料を作り直す流れになっており、資料作成に2週間以上、確認までに3週間かかる例があった一方、主要メンバーへの浸透が進むなかで、報告確認までの時間が3週間から3日に短縮されたとされています。また、600以上の事業管理をAsanaに移行し、報告そのものが目的化しにくい運用へ寄せていると説明されています。
双日テックイノベーションのプレスでは、職員アンケートで「自分の業務を管理できている」と回答した割合が導入前比で約30%増加したほか、階層を辿っていた進捗報告がAsana上で一元確認できるようになり負荷が下がったこと、タスクの背景や判断理由が蓄積され異動時にも引き継ぎやすくなったことが列挙されています。第20回世界バラ会議福山大会2025のような大規模案件でも、多部署・外部関係者間で進捗や課題を共有し、ボトルネックの早期発見につなげたとされています。
Asanaの事例では、行政サービスにおけるモチベーション設計の難しさに触れたうえで、達成業務が市民サービスにどの程度直結するかも評価の観点に含める工夫が紹介されています。また、業務の可視化が進んだ結果、「作業の抜け・漏れ」への意識が導入後に高まったというアンケート結果にも言及があり、場当たり対応から計画的な運用へ寄せる効果が補強されています。

職員の声と組織づくりの方向
Asanaの事例では、企画財政局企画政策部デジタル化担当部長兼総務局総務部参与(デジタル化担当)の岩崎雅宣氏が、問い合わせや書類移動の削減や、Asanaを見れば事業の進み具合を把握できる点を述べています。総務局総務部ICT推進課ICT企画担当次長の松岡基司氏は、プロジェクト全体の優先度が一目で分かり場当たり対応が減ったこと、タスク分解やファシリテーター不在による遅延など改善点が見えてきたことに触れています。同課主事の曽根将之氏は、完了タスクの可視化がモチベーションにつながったと説明しています。民間メンバーからなるCDOチームからは、問題の本質把握につながったとの意見が紹介されています。
プレスリリース掲載の集合写真では、総務局長の藤井康弘氏、デジタル化担当部長兼総務部参与(デジタル化担当)の大本貴淑氏、総務局総務部ICT推進課長の喜多村秀樹氏が紹介されています(肩書は配信元表記に基づく)。今後は、Asanaをプロジェクト管理にとどめず、日常業務や部門間依頼、ナレッジ共有へ広げ、AsanaのAI機能の活用も視野に入れる方針が、プレスと事例の双方で示されています。

自治体のワークマネジメント導入は、ツール設定だけで終わらず、研修と現場のオンボーディング、チャンピオン配置といった定着設計が成果を左右します。福山市の公開情報は、他都市が同種の基盤を検討するときの比較材料になりますが、セキュリティ要件や調達ルールは自治体ごとに異なるため、自庁のガバナンスと併せて設計を確認する必要があります。最新の運用ルールや契約条件は、福山市の公式発表とベンダー各社の案内を直接たどるのが確実です。なお、同趣旨の整理はImpress IT Watchの解説記事(https://it.impress.co.jp/articles/-/29200)でも紹介されており、報道側の要約として併せて参照できます。
