福山市・草戸町のまちづくり拠点、愛称「まちテラス」が市民投票で決定

2026年4月、福山市は旧市体育館跡地(草戸町)に建設中の「(仮称)まちづくり支援拠点施設」の愛称を「まちテラス」と公表しました。3月30日から4月15日に実施した市民投票1,306件の集計で、最終候補7案のなかで最多得票315票を獲得した名称です。市は2026年9月の運用開始を目指して整備を進めています。
福山市は2026年4月中旬に結果を公表し、中国新聞デジタルも2026年5月4日付で報じています。投票数315票という数字だけでは、施設の役割までは見えにくい。名称決定は、本町から草戸町へ移るまちづくり拠点再編の「看板」が市民の手で選ばれた、という位置づけにあります。
市民投票の結果と「まちテラス」が選ばれた理由
愛称の決定プロセスは、2026年2月13日から3月13日の公募(427件の応募)に続き、3月30日から4月15日の市民投票でした。投票は電子申請、メール、FAX、郵送、投票箱、持参の6通りで、市内在住者・在学者・在勤者が対象です。
有効票1,263票、無効票43票、総投票数1,306件の結果は次のとおりです。
| 順位 | 愛称 | 得票数 |
|---|---|---|
| 1 | **まちテラス** | **315** |
| 2 | つながローズ | 242 |
| 3 | ikuwa | 185 |
| 4 | ふくやまローズベース | 163 |
| 5 | ここのわ | 161 |
| 6 | たちまっち | 105 |
| 7 | TegooCity | 92 |
採用作品の提案者は福山市加茂町在住のJ・Y様(匿名希望)で、市が公表した理由には「地域に暮らすすべての人が気軽に立ち寄り、交流し、繋がりを照らし(テラス)、未来へ広げていく」という想いが記されています。「まち」は世代や立場を超えた地域全体、「テラス」は自然に集う憩いの空間と未来を明るく照らす存在、という説明です。なお、市は愛称の理由について、趣旨を損なわない範囲で事務局側が一部整理・修正していることも明記しています。
2位の「つながローズ」(242票)との差は73票。ばらのまち福山を象徴する名称も根強い支持を得ましたが、読みやすさと施設の多世代交流という趣旨に「まちテラス」が最も多く賛同を集めた形です。僕は最初、ローズ系の案が上位に来るかもしれないと思っていましたが、出典を当たると「まちテラス」が単独首位でした。有効票1,263票に対し315票は約25%で、過半数ではない点も、名称選定の背景として押さえておきたい数字です。
最終候補7案に見えた地域の語り
7案には、備後弁「行くわ」を活かした「ikuwa」、方言「たちまち」をもじった「たちまっち」、「てごうする」とCityを組み合わせた「TegooCity」など、福山らしい言葉遊びも並びました。命名そのものが、施設の性格——市民活動の入口——を市民が言語化したプロセスとも読めます。
公募427件から7案に絞り、さらに1,306件の投票で決める二段構えは、まちづくりネット(拠点に入居予定の活動団体等で構成)の意見を踏まえた選考も挟んでいます。最終候補の選定段階で専門家の審査だけで名称が決まらなかった、という読み方もできます。市民の票が最終決定権を持つ設計は、愛称募集要項の趣旨——「多くの方に親しみや愛着を持っていただく」——と整合しています。
草戸町に建つ拠点は、市民参画と老人大学を束ねる複合施設
(仮称)まちづくり支援拠点施設は、1972年開設の福山市市民参画センターと1958年設置の福山市老人大学を集約・複合化する事業です。中核には2014年10月から本町の市民参画センター2階で運営してきた福山市まちづくりサポートセンター(愛称・まちサポ)が入ります。
市の基本計画(整備運営事業関連資料)によると、所在地は福山市草戸町五丁目地内(旧福山市体育館跡)、敷地面積16,411㎡、建物延べ面積3,000㎡以内、駐車場250台以上、駐輪場50台以上です。福山駅から南へ約2.5km、エフピコアリーナふくやま(福山市総合体育館)や芦田川緑地かわまち広場など市民の往来が多いエリアに隣接します。
施設の目的は、こどもから高齢者まで多世代が訪れ、憩い・交流・連携することで、まちづくり課題の解決と持続可能な地域社会の形成に貢献することです。浸水想定を踏まえ、1階フロントラインは計画規模降雨1.0m、2階以上に主要機能を配する設計方針も資料に記載されています。
老人大学は1958年から地域リーダー育成と生涯学習の場として続いてきた制度で、市民参画センターは1972年から文化活動と市民交流を後押ししてきました。いずれも単体施設としては長い歴史がありますが、草戸町の複合拠点では「まちサポ」をハブに、相談・マッチング・ネットワークづくりが一つの屋根の下に集約される構図です。開発者側の説明では、担い手不足や空き家、移動のしにくさといった地域課題を、多様な主体の協働で解くための物理的な受け皿、と位置づけられています。

愛称決定と、本町から草戸町へ移る「拠点」の意味
名称が決まったからといって、9月に扉が開くまでの間、市民が触れる窓口は従来どおり本町にあります。2026年4月21日時点のまちサポ案内でも、地域活動専門相談の場所は「福山市本町1-35 市民参画センター2階」と記載されています。担当課の説明では、草戸町の新施設は市民参画と老人大学、まちサポを物理的にまとめる拠点ですが、愛称投票が先に終わった段階では、運用の細目——移転スケジュールや旧施設の扱い——は別途公表待ちの部分が残ります。
この種の論点では、名称と建物完成が先行し、利用者が「いつからどこへ行けばよいか」が後追いになりがちです。まちサポ登録団体やNPOの担当者側では、助成金・補助金の申請窓口、相談予約、イベント告知URLが本町前提で回っているため、9月前後の案内更新が実質的な分岐点になると読む向きもあります。
2024年10月、まちサポは開設10周年を迎え、広報ふくやまでも記念行事が紹介されました。10年間、本町2階が「まちづくりの顔」だった事実は、草戸町への移転が単なる建替え以上の意味を持つ理由の一つです。一瞬、愛称だけ新しくなって中身は同じ、と見えるかもしれませんが、駐車250台規模の敷地と老人大学との同居は、利用者層と来訪手段が変わりうる規模感です。

2026年9月以降、観測すべきは「中身の移転」
市が掲げる愛称募集要項には、採用名称を命名権(ネーミングライツ)の呼称の一部にも使う旨が記されています。愛称「まちテラス」が看板や広報にどう載るか、まちサポの愛称「まちサポ」とどう役割分担するかは、今後1〜3年の運用で形が固まる領域です。
2026年度の市民活動スタートアップ補助金(4月6日〜5月8日申請)のように、まちサポ登録が条件の制度は継続しています。施設が草戸町に移っても、登録・相談・助成の導線が途切れないかが、名称決定より生活者・団体側にとって実利のあるチェックポイントになります。意外と、建物の外観よりここが効いてくる場面も多いです。
採用者への記念品(3万円相当)贈呈や、命名権への組み込みといった要項上の扱いは、愛称決定後の広報設計にも影響します。市は採用前に応募者へ連絡し、氏名公表の可否を確認する手順を取っています。J・Y様が匿名希望としている点は、個人情報保護の観点からも自然な運用です。僕としては、提案者の顔より、7案それぞれの「意味・理由」が候補表に残っている方が、後から名称の意図を辿りやすいと感じます。
旧体育館跡から「まちテラス」へ——名称と場所のギャップ
報道や市資料が繰り返すキーワードは「交流」「生きがいづくり」「多世代」です。一方、市民投票の結果を見ると、抽象語より読みやすい造語が選ばれた側面もあります。「まちテラス」は英語のterraceと日本語の「まち」を並べた親しみやすい響きで、2位の「つながローズ」が持つ観光・ブランド色より、日常の入口感を優先した票行動とも解釈できます。
旧福山市体育館は2023年11月頃から解体が進み、草戸町の土地用途がスポーツから市民活動のハブへ切り替わる象徴でもあります。五本松公園との一体利用や、かわまち広場・総合体育館エリアとのにぎわい連携は、基本計画が期待する「周辺一体のまちづくり」の軸です。名称が決まった今、次に目に付くのは外構工事や駐車場整備、開所前の利用案内です。
スポーツ施設跡地に市民活動拠点を置く事例は、他自治体でも見られますが、福山市の場合は既存のまちサポ機能を引き継ぐ点が大きい。新規の空き施設活用ではなく、本町と草戸町の二拠点期間をどう説明するかが、移転後の混乱を抑える鍵になります。さすがに、9月開所と言い切った以上、夏〜秋の広報量が増えるのは自然な流れでしょう。
草戸町エリアは、総合体育館やかわまち広場と歩行・車両の動線がつながります。愛称「まちテラス」が示す「気軽に立ち寄る場」が機能するかどうかは、バス路線や駐車場の案内、初回来訪者向けのフロアマップといった運用の細部にかかっている、という見方もできます。

まあ、愛称が固まったことで、広報やSNSのハッシュタグ、案内看板の表記が一本化しやすくなる効果は確かにあります。ただ、僕自身は、名称より先に「9月に何がどこでできるか」の一覧が出る方が、地域の団体にとっては助かる場面が多いと感じます。知りませんでしたが、投票方法が6通りも用意されていたのも、在勤・在学者まで幅を広げた設計でした。電子申請の締切は4月15日17時15分と、市の通常業務時間に揃えられています。
確認の起点となる公式情報
愛称・投票結果の一次情報は、福山市まちづくり推進課のページ(https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/soshiki/machidukuri-suisin/390665.html)に掲載されています。施設整備の背景は同課の整備運営事業ページ(https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/soshiki/machidukuri-suisin/289363.html)と基本計画PDF(https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/uploaded/attachment/253456.pdf)が参照できます。まちサポの現行サービスは https://fukuyama-machisapo.com/ で確認できます。
2026年9月の開所が近づくと、利用時間、入居団体、イベントスペースの予約方法、本町からの移転日が順次公表されるはずです。名称「まちテラス」が市民の票で選ばれた以上、次に市と利用者が共有すべきなのは、愛称の意味を超えた具体的な利用シーン——誰が、いつ、何の相談や交流のために訪れるのか——という情報だと思います。とにかく気になるのは、開所直前の案内更新が、登録団体のカレンダーと噛み合うかどうかです。
問い合わせ先は、福山市市民局まちづくり推進部まちづくり推進課(084-928-1217、[email protected])です。まちサポの電話(084-923-9006)は、現行の相談・登録窓口として引き続き機能しています。僕が地域メディアとして追うなら、愛称公表の次は「入居団体の公募結果」と「開所記念イベントの有無」——ここが、名称を生活の言葉に変える分岐点になりそうです。
